HIGH ALTITUDE
MAGAZINE

山梨学院大学との共同研究結果を発表
低酸素環境下のウォーキングが血糖値コントロールに

高地トレーニングがトップアスリートのものであったがゆえに、一般の人々のウェルネスにかかわるエビデンスは、まだまだ少ない状況です。だからこそ、私たちハイアルチはリーディングカンパニーとして、大学や健康経営に取り組むパートナー企業・大学とともに、一般ユーザー向けのウェルネスにかかわる領域でのR&D(研究開発)を積極的に推進しています。今回ハイアルチは、山梨学院大学のスポーツ科学部スポーツ科学科 小山勝弘教授との共同研究成果を発表しました。小山教授の解説とともに、その内容をご説明致します、ぜひお読みください!

―今回「低酸素環境下のウォーキング×血糖値コントロール」に着目した背景を教えてください。
ご存知の通り、世界の糖尿病患者数は増加傾向であり、WHO(2023年)によると,1980年に成人の4.7% が糖尿病患者であったのに対し、2014年には8.5% に増え、また、2000年から2019年の間に糖尿病に起因する死亡率は3%も上昇したと報告されています。運動は、「インスリン抵抗性」(糖の細胞への取り込みを促す働きを有するインスリンの作用が十分に発揮できない状態)を改善します。また、低酸素曝露自体がインスリン抵抗性を改善させることも報告されています。そのため、運動と低酸素曝露の組み合わせが相乗効果をもたらす可能性があると考えました。
                          

―共同研究の内容について教えてください。
今回の研究では、最大心拍60%程度の、低強度での運動(軽いウォーキング)を、1回30分間、週2~3回の頻度で22日間のうち合計8回実施。運動期間前後のOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)だけではなく、CGM(持続血糖測定)を用いて、期間中の日常生活における間質液グルコース濃度(IG)も定常的に測定、常酸素運動群と低酸素運動群で比較検討しました。

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結論だけお伝えしますと、運動期間前後の最高 IG 濃度の変化において、常酸素運動群と比較し低酸素運動群で有意な低値が観察されました。
驚くべき点は、ウォーキングのような低強度の運動を、1回30分、週2~3回の頻度でたった8回という短期間で実施しただけで、有意差が出た点です。まさに低酸素環境がもたらす「時短効果」だと感じました。詳細はぜひ論文をご覧下さい。

―今後の展望を教えてください。
今回の研究を通じて、低酸素トレーニングの健康増進への活用余地の可能性を改めて強く感じました。今後も低酸素トレーニングに注目して研究を行っていきます。

―小山教授、ありがとうございました!今後ともよろしくお願いいたします。

論文:低酸素環境下の8回の運動トレーニングが 糖尿病予備群女性の間質液中グルコース濃度に及ぼす影響 :ランダム化比較試験(スポーツ科学研究,第7号,1 – 6,2024)https://ygu.repo.nii.ac.jp/records/2000142